従業員の新型コロナワクチン接種に伴う諸問題
企業は従業員に対して、新型コロナワクチンの接種を強制することができるのでしょうか。現時点で政府は、ワクチン接種はあくまで国民が自らの意思で受けるべきという見解を示していますが、従業員や顧客等の健康の為、安全配慮義務に基づき、従業員に対して接種を勧奨する行為自体は、違法とはいえないと考えられています。しかしながら、予防接種実施規則第6条に規定された「予防接種不適当者」(例:①明らかな発熱を呈している者、②重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者、③当該疾病に係る予防接種の接種液の成分によってアナフィラキシーを呈したことがあることが明らかな者)や明確に接種を拒否している従業員に対して、執拗に接種を勧奨することは、違法となる場合があるので注意が必要です。
また、ワクチン接種により健康被害が出た場合、労災が適用されるのかという問題も浮上します。前述の通り、ワクチン接種は労働者個々の意思に基づく為、原則として「業務」とは認められず、健康被害が生じても労災は適用されません。例外として、コロナ患者と接する機会が多く、感染により医療提供体制に大きな支障を及ぼす可能性のある医療従事者や、高齢者や基礎疾患のある入居者と接する機会の多い高齢者施設等の従事者に関しては、ワクチン接種が業務遂行に必要な行為として、労災保険の給付対象となる場合があります。
※このページは2021年8月25日時点の情報を元に執筆されています。最新の情報とは異なる場合もございますので、あらかじめご了承ください。